東京大学大学院工学系研究科・生産技術研究所の野村 政宏 教授らは、電子材料に用いられるシリコンにおいて、熱を運ぶ準粒子であるフォノンの準弾道的輸送を積極的に利用することで、80 K付近で熱伝導率の異方性を逆転させる構造を実現しました。本研究では、日本の伝統的な和装柄の一種である青海波に着目し、フォノンの平均自由行程より小さい構造にすることで、熱伝導率の異方性を4 Kで約0.8から300 Kで約1.2に逆転させることに成功しました。この成果は、適切なナノ構造を形成することで、熱流方向を温度帯で制御することが可能であることを示し、半導体デバイスの熱管理に広く応用できるため、AIコンピューティングやモバイル通信機器などに用いられ、ユビキタス社会の発展に貢献することが期待されます。本研究成果は、2024年4月4日(米国東部夏時間)に米国化学会の科学雑誌「ACS Nano」のオンライン版に掲載されました。
<発表論文>
B. Kim, F. Barbier-Chebbah, Y. Ogawara, L. Jalabert, R. Yanagisawa, R. Anufriev, and M. Nomura
"Anisotropy reversal of thermal conductivity in silicon nanowire networks driven by quasi-ballistic phonon transport," ACS Nano
〈DOI〉10.1021/acsnano.3c12767
<プレスリリース> 2024.04.05
東京大学
https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/4493
<マスコミ報道>
日本経済新聞 2024年4月5日
東大、熱伝導の異方性が温度で逆転するシリコンナノ構造を実現
https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP670016_S4A400C2000000/
日本の研究.com 2024年4月5日
熱伝導の異方性が温度で逆転するシリコンナノ構造を実現 ――和装柄構造で半導体
デバイスの進化に貢献――
https://research-er.jp/articles/view/132468
マイナビニュース 2024年4月8日
開発の鍵は和装柄 - 東大 生研がシリコンの熱伝導率の異方性が逆転する構造を実現
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20240408-2923011/
理化学研究所 2024年4月8日
熱伝導の異方性が温度で逆転するシリコンナノ構造を実現
https://q-portal.riken.jp/topic_detail?topic_id=T20240208&lang=ja