熊田・佐藤・藤井・梅本研究室の嶋川肇大学院生、熊田亜紀子教授、佐藤正寛准教授らの研究グループは、新材料の創出に向けて機械学習と量子化学計算を統合することで、ビッグデータに頼るAIの常識を覆し、スモールな実験データのみから外挿的な物性予測を実現しました。提案モデルは、分子構造を量子化学計算で得られる物理量に変換し、さらに分子のカテゴリカルな特徴にもとづいて量子化学情報と物性の間の複雑な関係性を抽出します。本研究では、種々の物性予測モデルの外挿性能を評価するため、有機化合物の12種類の実験データを利用した大規模なベンチマークテストを実施しました。その結果、提案モデルが物性予測の内挿・外挿性能ともに優れており、材料探索に最適なモデルであることを実証しました。本研究はマテリアルズ・インフォマティクスの課題であった外挿的な材料探索を可能にし、既存材料を凌駕する未踏材料の創出に貢献すると期待されます。本成果は1月10日付でNature系科学雑誌の『npj Computational Materials』オンライン版に掲載されました。

(a) 材料探索に不可欠な物性予測の外挿性
(b) データ規模と外挿性に着目した本研究と従来研究の違い
<論文>
Hajime Shimakawa, Akiko Kumada and Masahiro Sato, “Extrapolative prediction of small-data molecular property using quantum mechanics-assisted machine learning”, npj Computational Materials, 10, 11 (2024).
https://doi.org/10.1038/s41524-023-01194-2
工学系プレスリリース:https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2024-01-30-002