研究現況 2018/H30 (English)
モノリシック集積された半導体光デバイス/回路は、単体素子では得られない多くの機能や高い性能が実現され得るため、高度な光通信、光情報処理・記録,光計測を行う際の切り札として期待されている。本課題では能動素子材料として優れる化合物半導体を基盤に、製造技術的に進んでいるシリコン技術も活用しながら、新しい機能を有するモノリシック光集積回路の試作・開発を行っている。本年度も昨年に引き続き非対称光導波路偏波変換器、偏波合分波回路、偏波アナライザ回路、任意偏波合成回路、ストークスベクトル変調回路などの偏波制御を担う光集積回路群と、光フェーズアレイに基づく2次元ビームスキャナー回路と増幅器集積化、任意ユニタリ変換/MIMO光回路,表面入出射電気光学ポリマー変調器などの自由空間光操作/モード操作を担う光集積回路群を対象に研究している。これらのイメージング応用(ライダー等)も研究対象である。
光情報通信・処理、光センシング応用に資する次世代半導体レーザの研究を行っている。また,装置間や装置内部の情報伝送を担う光インターコネクトに向けて極微細、低消費電力の半導体発光デバイスの研究を行っている。昨年度までに極微小カプセル形金属キャビティレーザの低温電流励起発振と、室温光励起発振に成功した。現在、同レーザの電流励起室温連続発振を目指すとともに、出力導波路結合構造の解析・設計・試作を行っている。並行して分布帰還型(DFB)/分布反射型(DBR)レーザ、電界吸収光変調器、受動光素子の集積化・アレイ化のための有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE)技術の研究を進めている。
有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE)で形成される化合物半導体量子マイクロ構造に基づき、50%にせまる超高効率の太陽電池を研究、開発せんとしている。具体的には多接合タンデム型と中間バンド型の高効率太陽電池を対象としている。本年度は昨年に引き続き、超高速結晶成長技術、低抵抗トンネル接合のためのドーピング技術、InGaAsNを用いた低障壁超格子セル構造、量子井戸セルにおけるキャリアトランスポート、4接合タンデムセルに向けたInGaAs/GaAsP超格子ミドルセルの最適化、波状量子井戸のミドルセル応用、波状量子井戸における中間バンドの観測等の研究を行っている。
エピタキシャルリフトオフ,ウェーハ接合を用いた太陽電池の高効率化と低コスト化、高効率な太陽光発電モジュール、それらを応用した発電システムの研究を行っている.超高効率太陽電池における光マネージメント技術や,セル評価技術も研究対象である.本年度は昨年に引き続き,高効率太陽電池の薄膜化プロセス技術、表面活性化ボンディング、低コスト集光モジュール、高効率DC-DCコンバータ回路技術、薄膜太陽電池と気球を組み合わせた空中太陽光発電の研究を行っている。
有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE)によってシリコン、サファイア、窒化アルミニウム(AlN)等の上に(窒化物を含む)III-V族化合物半導体を結晶成長する技術を研究するとともに、それを応用した光デバイスの研究を行っている。これまで,シリコン上の高品質GaN/InGaN結晶成長、AlN上成長を利用したモノリシック白色発光ダイオード、シリコン上のInGaAs選択成長とその赤外イメージセンサ応用の研究を行ってきた。本年度はシリコン上のGaAsP成長とその多接合太陽電池応用に注力している。
太陽光発電に代表される再生可能エネルギーが時間的、空間的に偏在する問題を解消するために、再生可能エネルギーの大規模、低コストな貯蔵技術を研究している。特に、高効率太陽電池の起電力を直接利用して水を電気分解し高効率に水素を発生してエネルギー貯蔵する技術と、光起電力で二酸化炭素を直接還元し燃料化、化成品原料化する技術を研究している。具体的にはIII族窒化物電極、水分解用触媒、二酸化炭素還元用触媒、高効率還元反応器の研究を昨年に引き続き行っている。
総長室直轄総括寄付講座「太陽光を機軸とする持続可能グローバルエネルギーシステム」を設置し、太陽光資源に富む低緯度砂漠地帯で大規模に太陽光エネルギーを収穫・貯蔵し、短期的には地域の主要エネルギー源として活用し、将来的には地球全体に輸送して循環利用することで、現在の化石燃料システムに代わる永遠に持続可能なグローバルエネルギーシステムを構築せんとしている。砂漠地帯における大規模集光型太陽光発電と、それを利用した大規模水素発生、貯蔵、輸送の実証を計画している。