東京大学工学系研究科電気系工学専攻 中野・種村研究室

研究現況 2014/H26 (English)

1. 新機能モノリシック光集積回路
中野義昭・種村拓夫・杉山正和・崔明・綾田雅文・M. A. カズィ・川端祐斗・鈴木健太郎・福田将治・L. ランゴーシュ・M. シャヒン・小松憲人

 モノリシック集積された半導体光デバイス/回路は,単体素子では得られない多くの機能や高い性能が実現され得るため,高度な光通信,光情報処理・記録,光計測を行う際の切り札として期待されている.本課題では,能動素子材料として優れる化合物半導体を基盤に,製造技術的に進んでいるシリコン技術も活用しながら,新しい機能を有するモノリシック光集積回路の試作・開発を行っている.本年度は特に,シリコン上の光フェーズアレイスイッチ回路の試作・評価を行っているほか,偏波変換器集積化光検出器,Al系量子井戸による偏波制御器,偏波アナライザ回路などの偏波制御を担う光集積回路群と,面内/面垂直45度ミラー,光フェーズアレイビームスキャナー回路などの自由空間光操作を担う光集積回路群を研究している.

2.次世代半導体レーザ・半導体発光デバイス
中野義昭・種村拓夫・杉山正和・J. O. ケルマン・張柏富・R. テイラー・沖本拓也・詹文慧・千枝航・虞伝慶・周鵬

 光情報通信・処理,光センシング応用に資する次世代半導体レーザの研究を行っている.また,装置間や装置内部の情報伝送を担う光インターコネクトに向けて,極微細,低消費電力の半導体発光デバイスの研究を行っている.本年度は,省面積フォトニック結晶レーザ,極微小カプセル形状金属キャビティレーザの解析と試作を行っているほか,InP光導波路と結合した金属クラッド共振器の設計と作製を行っている.並行して,波長多重アクセス通信向けの反射型半導体光増幅器によるセルフシード光源の研究を進めている.

3.化合物半導体量子構造を用いた超高効率太陽電池
中野義昭・杉山正和・種村拓夫・渡辺健太郎・王云鵬・H. ソダーバンル・藤井宏昌・W. ヤンワチラークン・K. トープラサートポン・加藤巧

 有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE)で形成される化合物半導体量子マイクロ構造に基づき、50%にせまる超高効率の太陽電池を研究、開発せんとしている。具体的には,多接合タンデム型と中間バンド型の高効率太陽電池を対象としている.本年度は,InGaAs/GaAsP超格子ミドルセルの開発,量子井戸セルにおけるキャリアトランスポートと集光効果の解析、MOVPEによる波状量子井戸形成の各研究を行っている。

4.抵コスト・高効率太陽電池システム開発
中野義昭・杉山正和・種村拓夫・渡辺健太郎・S. S. ハン・A. ドラマール・井上智之・山下大之

 エピタキシャルリフトオフ、ウェーハ接合を用いた太陽電池の高効率化と低コスト化、高効率な太陽光発電モジュール、それらを応用した発電システムの研究を行っている。超高効率太陽電池における光マネージメント技術や、セル評価技術も研究対象である。本年度は主に、高効率薄膜量子井戸セルの試作、表面活性化ボンディング、集光条件下での量子井戸セルの詳細な動作特性解析の各研究を行っている。並行して、ペロブスカイトセルの試作も行っている。

5.ヘテロジニアスMOVPE技術と光デバイス応用
中野義昭・杉山正和・種村拓夫・久保田雅則・M. マシュー・王宏波・劉才・傳宇峰・渡邉冬馬・鈴木道洋・小林竜馬

 有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE)によって、シリコン、サファイア、窒化アルミニウム(AlN)等の上に(窒化物を含む)III-V族化合物半導体を結晶成長する技術を研究するとともに、それを応用した光デバイスの研究を行っている。本年度は、新規シード層と核発生制御によるGaNの転移低減、in-situウェーハ曲率解析によるシリコン上GaNの結晶性向上、シリコン上のInGaAs成長とその赤外イメージセンサ、微小ディスク発光ダイオードへの応用、AlN上成長を利用したモノリシック白色発光ダイオードの研究を行っている。

6.光電気化学と再生可能エネルギー貯蔵
中野義昭・杉山正和・藤井克司・小池佳代・鍾恒・中村亮裕・H. リュウ

 太陽光発電に代表される再生可能エネルギーが時間的、空間的に偏在する問題を解消するために、再生可能エネルギーの大規模、低コストな貯蔵技術を研究している。特に、高効率太陽電池の起電力を直接利用して水を電気分解し高効率に水素を発生してエネルギー貯蔵する技術と、光起電力で二酸化炭素を直接還元し燃料化、化成品原料化する技術を研究している。本年度は窒化物半導体の電極応用と、水溶液中の二酸化炭素の電気化学的還元の研究を行っている。

7.太陽光を機軸とする持続可能グローバルエネルギーシステム
中野義昭・茂木源人・杉山正和・渡辺健太郎

 総括寄付講座「太陽光を機軸とする持続可能グローバルエネルギーシステム」を設置し、太陽光資源に富む低緯度砂漠地帯で大規模に太陽光エネルギーを収穫・貯蔵し、短期的には地域の主要エネルギー源として活用し、将来的には地球全体に輸送して循環利用することで、現在の化石燃料システムに代わる永遠に持続可能なグローバルエネルギーシステムを構築せんとしている。